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大阪高等裁判所 昭和24年(ネ)277号 決定 1950年3月23日

主文

控訴人等と被控訴人恵我村農地委員会との間の訴訟につき原判決を取消し、事件を大阪地方裁判所に差戻す。

控訴人等と被控訴人国との間の控訴につき、控訴人等の請求中買収計画の無効の確認を求める部分はこれを棄却し、その余の請求はこれを却下する。

被控訴人国に対する控訴費用は控訴人の負担とす。

事実

控訴人等はまず「原判決を取消す、本件を大阪地方裁判所へ差戻す」との判決を求め、次にもし差戻しの理由のないときは、被控訴人委員会に対し、「同委員会が昭和二二年一二月原判決末尾の目録掲記の土地に対して定めた買収計画を取消す」旨、及び被控訴人国に対し、原審における請求の趣旨を改めて、新に「右買収計画の無効であること、並びに之に関する公告、異議却下、裁決、承認及び右買収計画以後之に基因する各行政処分の無効であることを確認する」旨の判決を求め、被控訴人等は控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の陳述は、控訴人等において、本件訴願裁決の控訴人等に到達したのは昭和二三年八月三日である。なお被控訴人国に対する請求につき、本件買収計画その他行政処分は適法な形式要件を具備しない無効のものである、但し無効原因の具体的事実は主張しない、と述べ、被控訴人委員会において、右訴願裁決到達の日はこれを認めると述べた外、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

(立証省略)

理由

まず被控訴人委員会に対する本訴の適否について考えるに、同被控訴人が昭和二二年一二月二三日控訴人等主張の土地につき農地買収計画を定め、控訴人等が昭和二三年一月八日これに対して異議を申立てて同月一三日却下せられ、同月一八日大阪府農地委員会に訴願した結果同年八月三日訴願棄却の裁決が控訴人等に到達したことは当事者間に争がない。このような場合に自作農創設特別措置法第四七条の二第一項本文の定める一箇月の上訴期間を、原審の見解のように右異議申立の日から起算することは、一方に異議や訴願のなお繋属しているに拘らず重ねて訴を起すことを強制する事となり、当事者に対し苛酷に過ぎ、条理に反する結果を来すから、妥当な解釈とは認められず却て行政事件訴訟特例法第五条第四項の規定と同様に、訴願の裁決の到達した日から起算するものと解する方が、法の精神に適合するものと云わねばならない。(昭和二四年(オ)第一六一号同年一〇月一八日言渡最高裁判所第三小法廷判決参照。)なお買収計画取消の訴が出訴期間経過により不適法となつた後でも同じ内容の請求を訴願の裁決に対する取消の訴として適法に起せると云う原審の見解については、この二つの訴は形こそ違え結局同一の訴であつて、前者の訴が出訴期間の徒過によりもはや起せなくなつた以上、再訴は許されないものと解するから、原審の見解はこれを採用し難い。そうすると、本訴が起されたのが昭和二三年八月五日であることは記録上明かであつて、本訴は法定出訴期間内に起された適法なものであるに拘らず、原審がこれを該期間経過後に起された不適法な訴として却下したのは失当であるからこれを取消し、民訴第三八八条により本件を原裁判所に差戻すべきものとする。第二に被控訴人国に対する控訴人等の請求について考えるに、右請求中「本件買収計画の無効確認を求める」部分については控訴人等においてその無効原因の具体的事実を主張しないのであるから、この部分の請求は理由なしとして棄却するの外はない。次に「右買収計画に関する公告」、は買収計画の表示行為に過ぎず独立した行政処分ではないから、これに対する無効確認請求は不適法として却下すべく「異議却下決定及び訴願棄却の裁決」については、買収計画の無効確認を求める以上これと別箇にその無効の確認を求める必要は何等認められないから、確認の利益を欠くものであり、「承認」については、これは行政庁間の内部行為であつて、前同様控訴人等においてはその無効確認を求める必要はないから確認の利益を欠き「右買収計画以後之に基因する各行政処分の無効の確認を求める」と云うのは、請求の目的が不特定であるから、いずれも不適法な訴としてこれを却下すべきものである。

よつて民訴第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。(昭和二五月三月二三日大阪高等裁判所第一民事部)

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